Chapter 23 of 122
正法眼藏第十六 行持 上 · 3
樵客遇之猶不顧、
郢人那得苦追尋。
(摧殘の枯木寒林に倚る、幾度か春に逢うて心を變ぜず。樵客之に遇うて猶顧みず、郢人那ぞ苦に追尋することを得ん。)
つひにおもむかず。これよりのちに、なほ山奥へいらんとせしちなみに、有頌するにいはく、
一池荷葉衣無盡、
數樹松花食有餘。
剛被世人知住處、
更移茅舍入深居。
(一池の荷葉衣るに盡くること無し、數樹の松花食するに餘有り。剛世人に住處を知らる、更に茅舍を移して深居に入る。)
つひに庵を山奥にうつす。
あるとき、馬祖ことさら僧をつかはしてとはしむ、和尚そのかみ馬祖を參見せしに、得何道理、便住此山(何の道理を得てか便ち此山に住する)なる。
師いはく、馬祖、われにむかひていふ、卽心是佛。すなはちこの山に住す。
僧いはく、近日は佛法また別なり。
師いはく、作麼生別なる。
僧いはく、馬祖いはく、非心非佛とあり。
師いはく、這老漢、ひとを惑亂すること了期あるべからず。任他非心非佛、我祗管卽心是佛(さもあらばあれ非心非佛、我れは祗管に卽心是佛なり)。
この道をもちて馬祖に擧似す。
馬祖いはく、梅子熟也(梅子熟せり)。
この因緣は、人天みなしれるところなり。天龍は師の神足なり、倶胝は師の法孫なり。高麗の迦智は、師の法を傳持して本國の初祖なり。いま高麗の諸師は師の遠孫なり。
生前には一虎一象、よのつねに給侍す、あひあらそはず。師の圓寂ののち、虎象いしをはこび、泥をはこびて師の塔をつくる。その塔いま護聖寺に現存せり。
師の行持、むかしいまの知識とあるは、おなじくほむるところなり。劣慧のものはほむべしとしらず。貪名愛利のなかに佛法あらましと強爲するは小量の愚見なり。
五祖山の法演禪師いはく、師翁はじめて楊岐に住せしとき、老屋敗椽して、風雨之敝はなはだし。ときに冬暮なり、殿堂ことごとく舊損せり。そのなかに僧堂ことにやぶれ、雪霰滿牀、居不遑處(雪霰牀に滿ちて、居、處るに遑あらず)なり。雪頂の耆宿なほ澡雪し、厖眉の尊年、皺眉のうれへあるがごとし。衆僧やすく坐禪することなし。衲子、投誠して修造せんことを請ぜしに、師翁却之いはく、我佛有言、時當減劫、高岸深谷、遷變不常。安得圓滿如意、自求稱足(我佛言へること有り、時、減劫に當つて、高岸深谷、遷變して常ならず。安くんぞ圓滿如意にして、自ら稱足なるを求むることを得ん)ならん。古往の聖人、おほく樹下露地に經行す。古來の勝躅なり、履空の玄風なり。なんだち出家學道する、做手脚なほいまだおだやかならず。わづかにこれ四五十歳なり、たれかいたづらなるいとまありて豐屋をこととせん。つひに不從なり。
翌日に上堂して、衆にしめしていはく、
楊岐乍住屋壁疎、
滿牀盡撒雪珍珠。
縮却項、暗嗟嘘、
翻憶古人樹下居。
(楊岐乍めて住す屋壁疎かなり、滿牀盡く雪の珍珠を撒らす。項を縮却て、暗に嗟嘘す、翻つて憶ふ、古人樹下に居せしことを。)
つひにゆるさず。
しかあれども、四海五湖の雲衲霞袂、この會に掛錫するを、ねがふところとせり。耽道の人おほきことをよろこぶべし。この道、こころにそむべし、この語、みに銘すべし。
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