Chapter 89 of 122
正法眼藏第七十二 安居 · 4
大衆禮拜をはりて、知事まづ庫堂にかへりて主位に立す。つぎに首座すなはち大衆を領して庫司にいたりて人事す。いはゆる知事と觸禮三拜するなり。
このとき小師、侍者、法眷等は、法堂上にて住持人を禮拜す。法眷は兩展三拜すべし、住持人の答拜あり。小師、侍者、おのおの九拜す。答拜なし。沙彌九拜、あるいは十二拜なり。住持人合掌してうくるのみなり。
つぎに首座、僧堂前にいたりて、上間の知事牀のみなみのはしにあたりて、雲堂の正面にあたりて、面南にて大衆にむかうてたつ。大衆面北して、首座にむかうて觸禮三拜す。首座、大衆をひきて入堂し、戒臘によりて巡堂立定す。知事入堂し、聖僧前にて大展禮三拜しておく。つぎに首座前にて觸禮三拜す。大衆答拜す。知事、巡堂一迊して、いでてくらゐによりて叉手してたつ。
住持人入堂、聖僧前にして燒香、大展三拜起(大展三拜して起く)。このとき、小師於聖僧後避立。法眷隨大衆(小師、聖僧の後に避けて立つ。法眷、大衆に隨ふ)。
つぎに住持人、於首座觸禮三拜(首座に於て觸禮三拜す)。
いはく、住持人、ただくらゐによりてたち、面南にて觸禮す。首座大衆答拜、さきのごとし。
住持人、巡堂していづ。首座、前門の南頰よりいでて住持人をおくる。
住持人出堂ののち、首座已下、對禮三拜していはく、此際幸同安居、恐三業不善、且望慈悲(此の際幸ひに安居を同じうす、三業不善ならんことを恐る、且望すらくは慈悲あらんことを)。
この拜は、展坐具三拜なり。かくのごとくして首座、書記、藏主等、おのおのその寮にかへる。もしそれ衆寮僧は、寮主、寮首座已下、おのおの觸禮三拜す。致語は堂中の法におなじ。
住持人こののち、庫堂よりはじめて巡堂す。次第に大衆相隨、送至方丈。大衆乃退(大衆相隨ひて、送つて方丈に至りて、大衆乃ち退す)。
いはゆる住持人まづ庫堂にいたる、知事と人事しをはりて、住持人いでて巡堂すれば、知事しりへにあゆめり。知事のつぎに、東廊のほとりにあるひとあゆめり。住持人このとき延壽院にいらず。東廊より西におりて、山門をとほりて巡寮すれば、山門の邊の寮にある人、あゆみつらなる。みなみより西の廊下および諸寮にめぐる。このとき、西をゆくときは北にむかふ。このときより、安老、勤舊、前資、頤堂、單寮のともがら、淨頭等、あゆみつらなれり。維那、首座等あゆみつらなるつぎに、衆寮の僧衆あゆみつらなる。巡寮は、寮の便宜によりてあゆみくははる。これを大衆相送とはいふ。
かくのごとくして、方丈の西階よりのぼりて、住持人は方丈の正面のもやの住持人のくらゐによりて、面南にて叉手してたつ。大衆は知事已下みな面北にて住持人を問訊す。この問訊、ことにふかくするなり。住持人、答問訊あり。大衆退す。
先師は方丈に大衆をひかず、法堂にいたりて、法座の堦前にして面南叉手してたつ、大衆問訊して退す、これ古往の儀なり。
しかうしてのち、衆僧おのおのこころにしたがひて人事す。
人事とは、あひ禮拜するなり。たとへば、おなじ郷間のともがら、あるいは照堂、あるいは廊下の便宜のところにして、幾十人もあひ拜して、同安居の理致を賀す。しかあれども、致語は堂中の法になずらふ。人にしたがひて今案のことばも存ず。あるいは小師をひきゐたる本師あり、これ小師かならず本師を拜すべし、九拜をもちゐる。法眷の住持人を拜する、兩展三拜なり。あるいはただ大展三拜す。法眷のともに衆にあるは、拜おなじかるべし。師叔、師伯、またかならず拜あり。隣單隣肩みな拜す、相識道舊ともに拜あり。單寮にあるともがらと、首座、書記、藏主、知客、浴司等と、到寮拜賀すべし。單寮にあるともがらと、都寺、監寺、維那、典座、直歳、西堂、尼師、道士等とも、到寮到位して拜賀すべし。到寮せんとするに、人しげくして入寮門にひまをえざれば、牓をかきてその寮門におす。その牓は、ひろさ一寸餘、ながさ二寸ばかりなる白紙にかくなり。かく式は、
某寮 某甲
拜賀
又の式
巣雲 懷昭等
拜賀
又の式
某甲
禮賀
又の式
某甲
拜賀
又の式
某甲
禮拜
かくしき、おほけれど、大旨かくのごとし。しかあれば、門側にはこの牓あまたみゆるなり。門側には左邊におさず、門の右におすなり。この牓は、齋罷に、本寮主をさめとる。今日は、大小諸堂諸寮、みな門簾をあげたり。
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